積立での投資は本当に有効なのか? ~時間軸から考える積立投資の最大の効果~

みなさん、こんにちは、りょーへーです。この記事を開いていただいてありがとうございます。

前回長期分散投資のどれくらい有効であるのかについて分析をしました。今回は、もう一つの投資方法である積立投資の有効性に関する分析をしていこうと思います。資金がたくさんあれば、一括で投資をして、長期間そのままにほっとくのも手だとは思うのですが、その資金がない場合には時間を味方につけて投資をすることが非常に有効です。また、私が働いている銀行の投信販売の研修では一括で投資をするよりも積立で投資をした方が高い利益を狙うことができるということを教えられました。しかし、本当にそうなのかという疑問が浮かびましたので、今回はこの分析をしていきます。




 

〇分析目的

「積立投資をした方が一括で投資をするよりも高い利益は狙えるのか?」

 

〇分析データ

分析対象となるデータは、前回と同じで、

・TOPIX
・国内債券
・先進国株式
・先進国債券(為替ヘッジなし)
・先進国債券(為替フルヘッジ)

の5資産を分析をします

 

分析期間も、2001年11月1日~2019年9月6日

 

そのデータは、日興アセットマネジメントHPから持ってきました(2019年9月7日参照)。

 

〇分析方法

一括投資は前回と同じで、購入時の価格に比べて、売却時の価格がどれくらい増減しているかで、損益率を算出します。

積立投資の場合には、積立日を毎月1日(休みの場合には前営業日)とし、加重平均により平均取得単価を算出します。そして、その平均取得単価と売却単価を比較して、損益率を算出します。

 

〇分析条件

・売却は一回のみ(投資期間中は保有または購入を継続)
・手数料及び税金は考慮なし
・分配金などにより基準価格が下落することは考慮なし

 

〇仮説

・「積立投資をすることによって、一括で投資をすることよりも高い利益を得ることができる」

 

〇分析に入っていきましょう

まずは、得られたすべての期間のデータについて考えていきます。つまり、一括に投資に関しては2001年11月1日に投資信託を購入して、2019年9月6日に売却したとし、積立投資に関しては2001年11月1日から2019年9月まで毎月1日に積立投資を行い、2019年9月6日に売却したとします。この場合のそれぞれの資産の利益率を見ていきましょう。

上のグラフは、各資産の利益率を比較したもので、青色のものが積立投資をした場合の利益率でオレンジ色のものが一括投資をした場合の利益率になります。これを比較すると、どの資産でも積立投資よりも一括投資のほうが利益率が高いことがわかります。

個人的には、国内債券や為替をフルヘッジした先進国債券のほうは、積立投資よりも一括投資のほうが利益が高くなるが、株式や為替ヘッジなしの先進国債券のほうは一括投資よりも積立投資のほうが利益率が高くなるのではないかと思っていましたが、結果としてはどの資産でも一括投資のほうが利益率は高くなりました。

なぜ上記のような仮説を考えたのかというと、株式や為替ヘッジのされていない外国の債券は値動きが国内債券などと比べると値動きが大きいので、その分取得価格が平均化されて、一括で購入するよりも適正値で保有することができるのではないかと考えたからです。しかし、重要なことを見落としていました。債券でも株式でも、十分な時間が経過すると、右肩上がりに成長していく可能性が高いということです。そのため、20年という超長期な期間で積立投資を行うと、リーマンショックのような大きく指数が下落した局面でも機械的に購入することができるけれども、指数が成長したのちの高い水準でも機械的に購入せざるを得ない状況になっているために、平均取得単価が底上げされてしまっています。そのため、売却益が一括投資の場合よりも小さくなっています。

それでも、TOPIXに連動するように投資をしていた場合には、この20年間で50%以上の利益を出しており、年率換算すると約2%の利益を出していた計算になるので、ただ貯金をしているよりかは全然よい結果であったことは間違いないでしょう。

今回の分析では、20年という超長期の分析をした結果、資産の成長性に、時間分散することで平均取得単価を適正値に均すという力が発揮できませんでしたが、時間を短くしたらどうなるのでしょうか? 次の分析では、期間を10年に変えて、分析をしてみます。まずは下の利益率のグラフを見てください。

今回の分析は、投資期間を2001年11月1日から2011年11月1日までに設定されており、2011年12月1日に売却したものです。2011年というとリーマンショックの影響でまだ経済が回復して切っていない状況で、これから回復し始める時期です。さて、この時期の利益率を比較していきましょう。このグラフを見るとわかると思うのですが、積立投資をした方が一括投資をした場合と比べて利益に関しては小さくなっており、それだけではなく、損失は大きくなっています。つまり、長期投資をした場合でも下げ相場においては、積立投資のほうが一括投資よりも損益率が下方にシフトしやすいということです。

こちらの分析結果も予想をはずれていました。株式やヘッジなしの外国債券は値動きが激しいので、リーマンショックの時に大きく下がっても今まで様々な局面で購入しているので、平均取得単価は一括で購入しているよりも下がっているのではないかと何となく考えていました。しかし、リーマンショック以前に資産は大きく成長していて、上昇局面では2001年の1.75倍近く、それに対して2002年~2003年の下落局面では0.75倍程度しか下落していませんでした。そのため、平均取得単価が大きく押し上げられてしまい、リーマンショックのような非常に大きな経済危機が到来したときに、積立投資をしている場合には一括投資をしている場合と比べて損失が大きくなってしまったと考えることができます。こちらも、最初の分析と同様長期投資による資産の成長性に対して時間分散による取得価格の平均化の力は小さいものであるということがわかりました。

 

上記二つの分析をまとめると、長期で積立投資を行う場合には、資産の成長性の影響力が非常に大きいために、時間分散によって適切に行ったとしても平均取得単価は時間が経過するとともに押し上げられていきます。そのため、長期あるいは超長期で行った一括投資には損益率ではどうしてもかなわないという特徴があります。上記のように、長期での積立投資の効果は薄いけれども、2~5年における中期での投資の場合にはどのような結果になるのでしょうか? まずは下のグラフをご覧ください。

 

このグラフは、投資期間が2014年11月1日から2017年1月10日までの2年3か月で、2017年1月10日の価格で売却しているものです。これを見ると、為替フルヘッジの外国債券は積立投資と一括投資で損益が逆の関係であるものの、それ以外の4資産ではすべて損益率は同じ方向を向いています。そして、もうひとつわかることがあります。それは、どの資産でも一括投資のほうが利益は大きくなっているいっぽうで、損失も大きくなっています。逆に積立投資のほうは、利益は小さくなてしまっていますが、その分損失が出ている為替ヘッジなしの外国債券も一括投資と比べて損失が小さくなっています。

この時期は株式などの指数が成長した一方で、2015年からチャイナショックがあり、株式などの指数は大きく下落した一方で、売却タイミングはそれが経過した後で、指数も回復したタイミングでした。先ほど分析をした結果、長期では時間経過による資産の成長性の力が非常に大きいので、積立投資では一括投資よりも大きな利益は見込めなかったので、中期の場合には積立投資のほうが一括投資よりも大きな利益が見込めるのではないかと思いましたが、実際には利益は小さくなりました。しかし、重要なことがわかりました。

それは、中期の場合には「積立投資をすることで一括投資をするよりもリスクが小さくなる」ということです。積立投資をすることで、様々なタイミングで購入することができます。一括投資では下がっているタイミングで購入することで大きな利益を狙うことができますが、高値で購入してしまうと中期の場合でも損につながってしまう場合があります。しかし、時間分散をすることで経済が成長しているときには平均取得単価を押し上げてしまい、利益を薄くしてしまう一方で、指数が後退しているときには低い価格で購入することができるので、損失を小さくし、次の成長に備えることができます。また、長期投資による資産の成長性の力も中期の投資の場合には影響力が小さいので、利益率の乖離もかなり小さくなっています。

 



今回の内容は以上です。

結論としては、積立投資は長期間行っても積立による時間分散の効果は非常に薄い。むしろ時間経過による資産の成長性の影響で平均取得単価を押し上げてしまうために、売却のタイミングによっては長期で積立を行っていたとしても一括で投資をしていた場合よりも損失が大きくなってしまう可能性がある。しかし、中期の投資においては、積立投資を行うことで平均取得単価を均すことができるので、一括で購入する場合よりもリスクを低減することができる。また、いくら長期投資においては一括のほうが利益が高いからと言って、長期の積立投資で増えないわけではないから、ただ貯金をするよりかは良い方法であると考えられる。

 

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