結局中東株は儲かるのか? これまでとこれから

みなさん、こんにちは。前回の記事で、保有しているUAE関係の株式ファンドに関して評価損が出ているので、今回はそのファンドが結局は儲かる見込みはあるのかについて考えていこうと思います。

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以前の記事について

以前の記事で、私が保有しているUAE株式の投資信託が約6%前後の評価損が出ているということで、そのファンドに関して概要と、そして、投資対象地域であるUAEの経済情勢のデータとこれからの展望について書いていこうと思います。

●保有投信の概要

今回の記事で詳細を説明する投資信託は、「ドバイ・アブダビ株ファンド」というファンドで、ドバイとアブダビを中心として、中東や北アフリカの企業に投資をする投資信託です。投信に占める株式の割合は約95%で、そのうち約半数が銀行などの金融機関の銘柄で構成されており、次に多いもので不動産や運輸業でそれぞれ15%ずつで構成されています。

日経225やNYダウなどのような先進国のインデックスファンドと違うところは、このファンドは非常に市場規模が小さいです。例えば先進国のインデックスファンドでは、非常にたくさん銘柄があるので、時価総額の最も大きなアップルでさえも投資信託での運用比率はせいぜい数%です。しかし、市場規模が小さいとは、構成する銘柄数がかなり少なくなります。構成銘柄数が少ないとは、一つ銘柄が投資信託の資産配分に占める割合が高くなるということです。これは何を意味するのかというと、一つの会社の株式の値動きが投資信託全体の値動きに大きく影響を与えるということです。実際に、この投資信託で最も資産配分が大きい銘柄は、「ファースト・アブダビ・バンク」なのですが、この銀行への資産配分が約4分の1(25%)を占めています。なので、その分この銀行の株式の値動きがこの投資信託の値動きにじかに影響しているということです。

さて、このファースト・アブダビ・バンクなのですが、どのような銀行なのかというと、2017年5月に当時総資産総額が2位のナショナルバンク・オブ・アブダビと4位のファースト・ガルフ・バンクが合併してできた銀行です。それにより、中東とアフリカにおける最大の銀行になり、アジアやアフリカ市場への展開も見込まれています。格付投資情報センターのレポートによると、「法的にも財政的にもアブダビ政府から独立しているが、株式を保有しているのはアブ ダビ政府(アブダビ投資評議会やMubadaraを通じて約37%)などで、アブダビ政府の幹部が取締役を兼 務するなど人的な関係も強い。」と評されていて、リスク耐久力もAゾーンと信用力も非常に高いです。しかし、同時に、「不動産や原油価格の低迷が続いていることか ら、不動産市場や開発プロジェクトなどに関連した貸出先のリスクには注意が必要だ。」とも評されています。また、直近のレポートでは、合併によるシナジーが大きく発揮されていると評しています。そのため格付もA+からAA-に上昇しました。

 

●中東経済に関して

大抵の方々が簡単に想像できることだと思いますが、中東経済はオイルマネーによって繁栄をした地域です。特にUAEはその影響力が顕著です。このオイルマネーを十分に利用することによって国のインフラ整備や社会福祉を充実させていきました。そして、それでも余るお金に関しては世界中の金融市場に投資をしており、その存在感は非常に大きくなっています。そのため、原油価格などの下落が起きると、一気に市場からオイルマネーが引き出されるために、株式や債券の価格が大きく下がる可能性もあります。このように、中東経済はオイルマネーに非常に依存しています。そのため、今後いかに経済におけるオイルマネーの比率を小さくしていき、原油に依存しない経済を構築していくかがカギとなっています。

同じようにオイルマネーに依存している国がもう1か国あります。それがロシアです。ロシアは世界第一位に産油国です。しかし、ロシアとUAEでは、決定的に違う面があります。それは政治的側面です。ロシアは、これまでの社会主義による政治体制の影響なのか、外資の流入が全くなされておらず、対外的に閉鎖されている経済です。そのため、原油産出以外の産業がなかなか育たず、原油の価格下落が起きると経済への影響が大きく現れます。それに対して、UAEなどは外資の受け入れを積極的に行い、非常に開かれた経済的環境を有しているうえに、余剰のオイルマネーを有事にそなえて様々なIT産業に投資をしています。さらに、ロシアではGDPに占める原油産出割合が7割近いのに対して、UAEではGDPに占める原油産出割合は3割程度と、原油への依存度はかなり小さくなっています。

●今後の展望について

オイルマネーの存在のおかげで先進国にも引けを取らないほどに成長を遂げた国であるUAEですが、これまでは原油に依存した経済でした。しかし、これからは原油がいつ枯渇するかわからないという考えが世界の共通認識です。そのため、いかにして原油を使わない経済を樹立するかがカギとして考えられています。俗に言う、「持続可能な発展」というものです。それにあたって、従来のUAEは非常に不利な戦を戦わなくてはいけない状況に置かれると考えられます。しかし、現状ではオイルマネーの余剰分を新産業育成のための投資として有効利用したり、インドやアフリカなどから優秀な人材を集めたりして、原油価格が下落したときに備えられる経済を作り上げている最中です。この施策がうまくいけば、中東諸国はさらに成長するでしょうし、うまくいかなくても当分はそのオイルマネーによって経済成長を維持するのではないでしょうか?

 

今回の内容は以上です。私個人の意見としては、より開放された経済のほうがマクロ的に見た時の経済成長の恩恵を大きく受けることができるのではないかと考えています。オイルマネーによる潤沢な資金を利用して新たな産業を育てることができるのではないでしょうか? 唯一の気がかりなのは、この成長の苦労を知らない、最初から持てるものである2世あるいは3世の時も同じような成長を維持することができるかということと、いつくらいから2世に切り替わるのかということです。

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参考資料

本当にわかる世界経済(井上恵理菜著)

 

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